彼女と一秒でも長く一緒にいたいから、僕は全て神様に納めました

「なに‥‥‥してるの？」

そのとき、震えた声が教室の扉の方から聞こえた。視線を声のした方に向けると、つぼみの姿が僕の目に映った。

「広瀬‥‥‥」

開いた口から、密かに片思いをしている僕の好きな女性の名字が小さく出た。

つぼみの手にはパンが二つ握られており、どうやら購買でパンを買っていたらしい。

「なにしてるの？」

そう言ったのと同時に、つぼみは手に持っていたパンを床に落とした。

つぼみは床に落としたパンを踏んで、慌てて僕たちの近くまで走り寄った。

「なにがあったの？机、ひっくり返ってるじゃない」

つぼみは乱雑な教室の状況を見て、心配そうな顔で尊人に訊ねた。

「なんでもないよ」

制服の埃を両手で払って、尊人はあっさりと言った。

「嘘つかないでよ。こんな状況で、なんでもないわけないでしょ！」

「ほんとうに、なんでもな‥‥‥」

「尊人、口から血が流れてる」

尊人の言葉を遮って、つぼみが震えた声でそう言った。