「はぁ」

僕の口から、深いため息が漏れた。

彼女と昔みたいになかよくしゃべれないことに、僕は気まずさを感じていた。

「願。悪いけど、今日もこれで好きな昼食買ってね。今朝忙しくて、願のべんとう作ってる時間なかったの。ごめんね」

そう言って母親は、僕に一万円札を手渡した。

「晩ごはんは、作ってあるの?」

僕は一万円札を右手で受け取りながら、冷たい声で訊いた。

「ごめん。晩ごはんは、その一万から余ったお金で買って食べて。私、今日もおそくなるの」

「そう、わかった」

小さな声で返事をして、僕は母親からもらった一万円札をサイフに入れた。

母親が僕のべんとうを作らなくなったのは、今に始まったことではない。僕が中学入学と同時に、母親はべんとうを作るのをやめた。理由は、父親のせいだ。

「………」

僕は家族三人なかよく写っている、写真立てに視線を移した。