彼女と一秒でも長く一緒にいたいから、僕は全て神様に納めました

「そ、そうですよね。すいません」

僕は、ペコリと頭を下げて謝った。

願いをひとつ叶えてあげるとか、神様の存在とか今まで非現実的な話だったが、今僕の目の前で起きていることはまちがいなく現実だった。

「さぁ、そなたの願いをひとつだけ叶えてやろう」

切れ長の目をすーっと細めて、女神様は人差し指を立てて言った。

「じゃあ、広瀬の母親の病気が治って、彼女とこのまま一緒にいたい」

僕は顔をリンゴのように赤くして、願いを口にした。

「その願いは、むりだ」

女神様は、冷たく言った。

「どうして?僕の願いをひとつだけ叶えてくれるのではなかったのですか?」

女神様に拒絶されて、僕はつい大きな声を上げた。

「その願いは、一万円の対価に見合ってないからだ。人の病気を完全に治したりするには、本人の一番大切な物を失わないといけないからだ」

女神様は、はっきりとした口調で僕に言った。