「そうだな、行くか」

明るい口調で言って、僕は勢いよく坂道を自転車でのぼった。

「おい、早くのぼってこいよ。尊人」
僕はまだ半分ぐらいしかのぼれていない、尊人を見下ろして言った。

「お金くれたら、早くのぼれるよ。願、お金くれよ」

「ざんねんだが、僕ももうお金ないんだ。じゃ、先に僕は神社に行くぜ」

そう言って僕は、坂道を下がって神社に向かった。

二カ月前と違って、僕にはお金がなかった。しかし、不思議と僕の気持ちはすがすがしい気分だった。



五分後、僕は神社に到着した。神社には鮮やかな紅葉が咲いており、秋の風景に彩られていた。

僕は神社の入り口に自転車を止めて、石段をのぼた。石段をのぼると神社が見え、それと同時に女性の後ろ姿が見えた。僕は参道を歩きながら、ゆっくりとその女性に近づいた。