「よかった、別れる前に願がちゃんと私との約束守ってくれて………」

「え!」

つぼみが口にした言葉を聞いて、僕の心臓がドクンと音を立てた。

「やっぱり、二人で死ぬのはやめよ。生きて、別れよ」

砂浜から立ち上がって、つぼみは夕日に照らされたオレンジ色の海を見つめて言った。

「つぼみ………」

僕はつぼみの背中を見つめながら、愛する名前を口にした。

「だって生きて別れたら、願と会えるじゃん。でも、死んだらもう、こうして愛し合う関係にはなれないかもしれないじゃん。だったら、好きなまま別れよ」

軽い口調で言って振り返ったつぼみだったが、瞳からひとすじの涙が頬を伝って流れていた。

「つぼみ………」

大切な人の名前を口にしたのと同時に、僕の視界が涙でにじんだ。

「泣いている姿、願には似合わないよ。泣いて別れるより、笑って別れよ」

そう笑って言ったつぼみだったが、瞳から涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。