彼女と一秒でも長く一緒にいたいから、僕は全て神様に納めました

「広瀬‥‥‥？」

彼女の横側を見ると、涙が頬を伝って流れていた。

「広瀬‥‥‥」

もう一度彼女の苗字を呼んだ僕の声は、不安そうだった。

彼女の涙は幼稚園のとき以来見たことがなかったし、突然の出来事に僕は戸惑った。

「神様って、いくら納めたら人間の願いを叶えてくれるのだろう？」

手の甲で涙をぬぐって、つぼみは神社を見たまま静かにそう言った。

つぼみの瞳はかすかに潤んでおり、哀しい色が浮かび上がっていた。

「なにか、願いを叶えたいことでもあるの？」

僕は、緊張した声で訊いた。

「あるから、神社に来てお祈りしてるんじゃないの」

つぼみは神社に手と手を合わせて、低いトーンで僕に言った。

「はは、そうだよね」

軽く笑顔を作って笑っていた僕だが、内心彼女が神社でなにを祈っているのか気になった。