彼女と一秒でも長く一緒にいたいから、僕は全て神様に納めました

「おーい!つぼみ」

右手を大きく振りながら、尊人が参道を歩いて広瀬つぼみに近づいた。

「お、おい。尊人‥‥‥‥」

僕は彼の名前を呼びながら、参道を歩いてつぼみに近づいた。

僕は心の中で尊人が、彼女のことを『つぼみ』と下の名前で親しげに呼んでいることに、モヤモヤした気持ちになった。

「あ、尊人君。神宮君。おはよう」

振り返ってつぼみは、笑顔で僕たちにあいさつをした。

夏休み明け、久しぶりに彼女を見ると、とても美しく感じた。女性らしい華奢な体型、パッチリとした大きな目、目の下にかすかにふくらんだ涙袋、薄いピンク色の唇、透き通った真っ白な肌、そして、やわらかい髪の毛をかわいらしい黒いリボンの髪留めで止めていた。

「つぼみ、朝早くから神社でなにしてんの?」

尊人が、不思議そうな顔で訊いた。

「べつに、なにも」

そう答えて、つぼみは笑顔で首を左右に振った。