彼女と一秒でも長く一緒にいたいから、僕は全て神様に納めました

「そうだな」

僕は赤色の自転車を見ながら、そっけなく言った。

この赤色の自転車、僕は確かに見覚えがあった。僕の心臓が急に速くなり、頬がかすかに熱くなる。

「どうする、願」

尊人が、僕に視線を移して訊いた。

「どうするって、休むに決まってんだろ」

そう言いながら僕はカバンを肩にかついで、石段をのぼる。

「そりゃそうだけどよ。でも、人がいるんだぜぇ。見つかると、めんどくさくないか?」

否定的な言葉を言っていた尊人だが、僕の後をついて歩いてきた。

石段をのぼると、僕の視界に神社が見えた。数メートル先には制服を着た若い女性の後ろ姿が見え、賽銭箱の前で両手を合わせて参拝していた。

「あれぇ?あれって、つぼみじゃないのか?」

ーーーーーードクン!

尊人が親しげに彼女の名前を口にして、僕の心臓が跳ねた。頬がさらに熱くなり、心臓の鼓動が激しくなる。

神社の入り口に止めてあった赤色の自転車は、〝広瀬つぼみ〟の物だ。