彼女と一秒でも長く一緒にいたいから、僕は全て神様に納めました

「千円、尊人にやるから早くのぼってこいよ。僕、神社に寄りたいんだ」

僕は東にある、神社の方に視線を向けて言った。

神社の反対側には海沿いの道が遠くに見え、その近くにある病院もここからだと小さく見えた。西から浜風が一瞬吹き、海水のしょっぱい香りがかすかに匂った。

「むり。千円じゃ、力でない」

尊人はぶるぶると首を振って、自転車を押しながらダラダラ歩いている。

「お前‥‥‥‥‥」

僕は、ピクリと眉を動かした。

尊人はまだ、この坂道をのぼるのに時間がかかりそうだ。

「じゃあ、一万円やるよ。だから、少し急いでくれ。学校に行く前に、神社に寄りたいんだ」

そう言って僕はサイフから一万円札を取り出し、尊人に見せた。

西から浜風が吹き、一万円札がひらひらゆれる。

「マジか!よっしゃあ!」

一万円札を見た尊人は目をキラキラと輝かせて、自転車にまたがってペダルを力強く踏んだ。その勢いはさっきとはまるで別人かのように、坂道をもうスピードでのぼる。