彼女と一秒でも長く一緒にいたいから、僕は全て神様に納めました

「結婚もして、もうじき新しい命も産まれるみたいだからね」

目を細めて女神様は、おっとりした口調で言った。

目を細めて話す女神様の顔を見ると、ほんとうに彼女が幸せになったんだなぁと伝わった。

「あ、ちょうど彼の好きだったその妻が新しい恋人と一緒に神社に来たよ」

「えっ!」

女神様の言葉を聞いて、僕は振り返った。

僕の数メートル視線の先に、とても幸せそうなカップルが神社に向かって歩いてくる姿が見える。女神様の言ったとおり妻は妊娠しているのだろうか、お腹がぽっこりと大きくふくれていた。

「元気な子が産まれて、幸せな家庭が送れますように」

女性は小銭を賽銭箱に投げ入れ、手を合わせて願った。

「俺も、妻と願いは一緒です。元気な子が産まれて、幸せな家庭が送れますように」

新しい旦那さんだろうか、三十歳ぐらいのメガネをかけた男性も女性と同じことを願った。

数秒間、静寂に包まれたのち、「帰ろか」と、男性が女性の手を握って言った。

「うん」

女性も手を握りしめ、神社から帰ろうとしたそのとき、「待ってください!」と、思わず声を上げて二人を呼び止めてしまった。