「ねぇ何難しい顔してんの?」



私は咄嗟に笑顔を貼り付けた。ーーー





「...いや、りっちゃんなに言ってんの?」


と、私の肩にあごを乗せるりっちゃんは、

ツインテールの三つ編みをプルプルと震えさ

せる。


「だってー!!もうおんなっくるしい!!友

チョコなんてなくなっちまえやおらー!」


「ゴふァぉッ」


と、私はみぞおちの辺りをギョッと締め付け

られた。


りっちゃんとはいわゆる腐れ縁ってやつなの

かな...いつのまにか私の隣にいる友達。少々

気性が荒い。


「今日はなに言い出すのか..というか今日もす

ごいファッションだね....」

と、そこでりっちゃんは私の背中からガバァ

ッと顔を上げる。りっちゃんこだわりのめが

ねが曇っていた。


「だってえ、ぼけっとしてる凛たんの顔が、

バレンタインで友チョコでだけ騒いで本命あ

げようとしない自分を嫌悪してるようにみえ

たんだもももーん」


マンガみたいに口を突き出すりっちゃん。


「いや、そんな顔されても...キミの心情私にア

フレコしないでくれる?」


と、苦笑い。そしたら、りっちゃんが高さが

違う白黒のシマシマニーソを履いた足を突き

出してきた。


「みて!男はこういうの好きだと思ってこれ

にしてきたのよ!でも、好きな野郎がいねぇ..

.」


と、私はしょげて机に顔を伏せるりっちゃん

の太ももをプニプニ。


「いや、これは素晴らしい太ももですなあ殿

方も惚れるでしょう」


と、にまーっと私が笑うと、りっちゃんが私

の手をバチッと除ける。


「やだっ触らないで!!何...もしかしてあな

た...」


そこで私はりっちゃんの耳元に口を寄せる。


「よいではないかよいではないか...」


りっちゃんはギュッと目を閉じて


「ッアー!」



「またやってるよ演劇部コンビ...」


「あっえ!?あいつら付き合ってるんじゃな

くて演劇部だったのか」


これが私達の日常。


おやめくださいっ...!とりっちゃんがふざけ

た後、急に真顔になった。


「はあー...今の男がやってくれないかなー..こ

う、ニーソの中に指入れて前のめりで私を..」


周りにめっちゃ見られるけど、りっちゃんとはお友達です。


「妄想ダダ漏れわらたーそれ知らんオッサン

でもいいの?」


「若くてイケメンだけに決まってんだろ...」


と、私は背筋をピンン...と伸ばし、手を胸の

前に。


「お嬢様、それは私の事ですよね?」


「イヤーッ!ドエス執事イエス!!!」


嬉しそうに自分を抱きしめるりっちゃんをよ

そに、私は気づいた。


あ、そういえば今日バレンタインだったな..。