家に帰ろう。濡れた顔を拭きながら、私は歩
いた。
すると、
「そそっか、あんたモテるから帰り遅かった
んだね、いや、ごめんなさい..」
あの女の子の声が聞こえた。一旦止まって振
り返る。彼女と菜太郎くんと私の距離はだい
ぶ遠かったけど、なぜか今の私の耳はいい。
「なんで僕の高校まできたの?」
ビックリした。菜太郎くんのその口調は、冷
たくて、ちょっと怒っているような感じだっ
た。天使のような彼とはかけ離れた声だった
。
「いや、皆さんまだ帰ってなかったけど、お
ばあちゃんに言われて..ってなんで女の私が男
のお前を迎えに行ってんだろ。」
「は?僕だって頼んでない」
「それ言うなら私だって菜太郎の迎えなんか
きたくなかったし...ていうかチョコは?あん
たモテてたじゃんさっきまで」
「全部断った。··というか少しはさっきの子を
見習ったらどう?デリカシーとか色々。」
私はビクッとまた驚いた。
「はあ!?たしかにあの子の方が私より可愛
いけど!........けど、なんだ?」
「馬鹿丸出し。」
「せぇなオオーイ!!ここからあそこまでの
道教えてください...」
「方向音痴。ていうか逆によくここまで来れ
たな··」
それ以降の会話は聞こえなかった。けど、終
始女の子が騒いで怒って菜太郎くんが貶して
る感じだった。
「..............」
菜太郎くんの、あの冷たい感じを知っている
のは、女の子の中で、きっと....
前はきゅううんとなってたところが今は締め
付けられるように痛い。
振られた後に、どうしてこんなこと聞いちゃ
ったんだろ....思わずふっと笑ってしまった。
あの2人が、どうか、幸せに...。
そう、思ってしまった。なぜか。
フラれた後の、気持ちを整理する為かも
しれないけど、··予感がする。
「雨..やんだ」
菜太郎くんはそう呟いたらしい。私も、ふと
空を見上げた。
「虹.....!」
それは、くっきりと浮かんでいて、キラキラ
とダイヤモンドのように輝く。
悲しくなる程、とても綺麗だ··。
営業が終わったらしいチヨコの前に、千代く
んが1人、立っていた。
「ああ..千代くんお疲れ様..」
千代くんは私を見た。けど何も言わなかった
。
「..だめだった。」
私は千代くんに向けて笑ってみせた。
「でも、あの時の千代くん、ヒーローみたい
だった..、チョコくれて、ありがとう...!」

