バレンタインのユウウツ



「え、粉々..!!」


チョコはみだれていて、銀紙から取れたチョ

コもあればチョコどうしくっついたものもあ

った。


「嘘」


ラッピングも黒ずんで汚い。.....とても人にあ

げられるものではない。


「どうしよう...っ!!」


ギュッと目をつぶった瞬間、



「美雨」



男子の声がした。振り返るとーー


「千代くん..」


ブラックチョコレートのような色をした髪が

風にそよぐ。大きな瞳が私を覗いていた。


「こっち」


千代くんはツンとした表情で私の腕を強引に

引っ張り、チヨコの中へ小走りに引き連れた




「あ、ごめん千代くん、チョコダメになっち

ゃってたしかにチョコ、買わなきゃ、かも··だけど、今

お金無い..」


と、焦って家に戻ろうとする私の腕を、千代

くんはグッとおさえた。


「菜太郎学校からいつ帰るか分からないだろ」


「そっ、そうだけど..!」


千代くんは、目の前の、チョコに夢中の女性

達を静かにかき分けて、何かチョコを持って

来てくれた。


「やる」


「え...!」


それは、ピンクの包装紙で、私が疎遠してい

たハートの、た、高そうなチョコだった!


「わっ、悪いからいいよ!それに告白まだ

出来てないし..」


「いいから早く行けっ!」


「っ!」


千代くん...?


片目を開けると、彼は、フゥーッと息をつい

て、口を開いていた。


「金には困ってないよ。むしろいらない位だ

からどうってことない」


千代くんは、ツンッと王様のような言葉を言

い放ち、私の腕をほら、と放した。


「〜ごめんっ、ありがとう!」


私は何か吹っ切れて、ピンクのハートのチョ

コを受け取って、学校へダッシュした。


「坊ちゃん冷えますよ、早く中へ!」


執事はバタバタと走って来て、千代に早く中

に入るように促した。傘もささずに外に出た

千代は髪から水を滴らせ、ジト目。


「..お前、今来ましたヅラしてるけど、いつか

らいた?」


「そんなっ!顔の通り、今来ましたよ。」


執事は、そう言いながらニヤリと笑みをこぼ

した。


「チッ。ーーこれだからバレンタインなんて

...」



千代は、走っていく美雨の姿を、見送ってい

た。執事は慌てて、そんな坊ちゃんに傘をさ

し続けた。