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「『恋人迷路を一緒に周りたい男子トップ3』に選ばれて、今、どんな気分ですか??」

「キャー!王子〜!!」

体育館に置かれている椅子に腰をかけて、1人でスクリーンを眺める。

放送室へ行っている人の方が多いのかな?

ここには本の十数人しかいない。

「とても嬉しいです!俺も、みんなと周りたかったな。」

「キャ〜!!!大輔様〜!!!!!」

「続いて、澄春王子はどうですか??」

「えっと……、僕なんかが、こんな、注目されるなんて……、本当に申し訳なさでいっぱいです。ごめんなさい……。」

「キャ〜!澄春様ったら、謙虚〜!!!!!!」

大輔くんも、澄春くんも、キラキラ輝いて見える。

保健室にいた時は、そんな風には見ていなかったのに。

これだけ見ると、毎日、一緒にいたのが嘘みたいだ。

でも、やっぱり、1番輝いていて……、1番遠くに行ってしまったように見えるのは……、

「では続いて、颯磨王子!どうですか??」

「特にありません。」

「キャ〜!颯磨様、安定のクール!!!!!」

颯磨くんだ。

あんなに沢山のファンに囲まれて、なんだか颯磨くんが颯磨くんじゃないような気がして……。

「ありがとうございます。では、次はお待ちかねの!フリートークタイムです!今回の『恋人迷路』について、3人で自由に話してくださいっ!」

今回の『恋人迷路』……。

っ……!!!

思い出すだけでも恥ずかしい。

何か、色々なことがありすぎて、頭がっ……!

オーバーヒートしかけてますっ……!

「そういえば、今回の『恋人迷路』、俺達が颯磨の恋のキューピットをしたんです!」

えっ……?

「そうそう。お手伝いしたんですよ。」

ザワッ

何だろう。凄く嫌な予感がする……。

「そうなんですか〜!?えっ?上手くいったんですか!?」

「颯磨、どうだったんだ??」

「大変だったんだよ。大輔くんだけじゃなくて、京くんにも手伝ってもらって。」

「え?京くんとは誰のことですか?」

「京っていうのは……、」

その時、私の頭に、最悪の考えが浮かんだ。

やっぱり、あの2人……。

颯磨くんと橋田さん。

みんな、その2人のキューピットをしていたんじゃない……?

「颯磨王子、ちなみに、その好きな子と言うのは、誰なんですか〜???」

嫌だ。聞きたくないっ……!

反射的に、目を瞑る。

「颯磨王子……?」

「すみません。ちょっと。」

でも直ぐに、ゆっくりと目を開けると、颯磨くんがいきなり走り出した。

えっ?ど、どういうこと???

「えっ?ちょっ、颯磨王子!?」

放送室がざわめく。

「おい、颯磨、どこ行くんだよ!」

「ごめん!優先順位、間違ってた!!」

優先順位……?

「は!?何言って……!!」

「いいよ、大輔くん。止めなくて。颯磨くん!頑張って!」

頑張って……?

『僕も今は橋田さんのこと、いいなって思ってて。』

ヤダ。何で今、こんな言葉を思い出しちゃうの……!?

『そういえば、今回の恋人迷路、俺達が颯磨の恋のキューピットをしたんです!』

ま、まさか……。

橋田さんに……、……会いに行くの……?

「ありがとう!」

終わりだ。

ついに、終わるんだ。

終わってしまう……。

そんなの……!

私は走り出した。