31.5



僕のクラスの出し物は、科学実験。

「みんな〜!今日はこれを着てやろう!」

クラスの女子が言った。

そこには、クラス全員分の白衣があった。

「実験だから白衣?いいね!!着よう!」

「たまには役に立つんだな。」

男子も女子も、ノリノリだ。

ということで白衣を着ると……、

「キャー!王子の白衣姿よ!!」

「写真!写真!!」

パシャ、パシャパシャッ

バシャバシャバシャバシャ!

ちょっ、連写……!

「おい、お前ら、まさかこれが狙いか……?」

1人の男子が言った。

「そうで〜す!」

呆れた……。

「悪いけど、撮らないでもらえる?」

いつもの調子で返す。

「え〜、何でよ王子〜。」

「迷惑だから。」

「キャー!クール王子、最高〜!」

何だろう……。

だんだん慣れてきたような気がしなくもない。

「じゃあ、仕方ないね。全部消そう。」

良かった。

「1枚だけはとっておこうよ〜。で、日奈子ちゃんに見せるのはどう?」

っ………!!!

「だ、駄目だ!それは絶対、駄目だ!!」

日奈子が……、僕の白衣姿を……とか!

か、考えただけでも……無理……。

「王子、可愛い〜!」

可愛い!?

「ほら、とっとと最終準備やるぞ!」

学級委員がそう言ってくれて、僕は助かった。

そういえば……。

日奈子といえば……、なんかこの前から気まづいし……、京に怒鳴ってしまったし……。

ちゃんと謝らなくちゃいけない。

でも、ただ謝るだけでは駄目だ。

何に腹を立てて、何故、怒鳴ったのか。

きちんと明確にしなくちゃ。

それじゃないと、

「水瀬くん。」

橋田さんに声をかけられた。

「今日の後夜祭、宜しくね。」

「あ、うん。」

後夜祭……。

そこで日奈子と澄春くんは結ばれてしまうのだろうか……。

僕は、やっぱり見ていることしか……、できないのだろうか……?

できることなら、京に謝ってから、日奈子をさらって……、って!

何、考えてるんだ……。

こんなに独占欲、強いのかよ、僕……。

こんな自分、知らない……。

『恋人迷路』、澄春くんと一緒に行って欲しくないとか、あわよくば一緒に行きたいとか……、そんなの……、無理なはずなのに……。

でも、こんな気持ちで後夜祭に出るのは、橋田さんにも申し訳ないよな……。

だから、消すんだ。

こんな気持ち。