30.9



さてさて、どうやら文化祭で決着がつきそうですねぇ……。

僕の策略で、みんなが必死になって波乱を巻き起こしまくっている。

実に面白い。

『恋人迷路』……。

そんなの迷信だって、分かっているはずなのに。

馬鹿じゃあるまいし。

いや、迷信どころか、僕が副生徒会長という立場を利用して作った、超絶適当なイベントなんだけど。

まさかここまで動揺してくれるとはねぇ。

こちらとしても見応えがある。

「ふーくかーいちょー!」

誰かに呼ばれて、振り返る。

知らない顔だ。

いかにもチャラそうな奴と、何か気弱そうな奴。

「あの、『恋人迷路』のスタッフって誰がやるんすか?」

「それは、生徒会が。」

「それ、めちゃめちゃ大変じゃないっすか!」

「いや、そうでもないですよ。というか、何の用ですか?」

「あ、そーだった、そーだった。俺、2年の辰巳 大輔っていいます。よろぴく!」

「あ、ぼ、僕は……、ほ、細谷京です……。」

何でこんなに正反対そうな2人が一緒にいるんだ……?

「俺、モテモテなんすよね。」

は……?

「だから『恋人迷路』、色んな人に誘われてて困ってるんすよ。だから、スタッフの方やりたいなー、なんて。」

「ぼ、僕は、体が弱くて暇なので、どせならスタッフを……と、思いまして……。」

まさかこの企画で、自分からスタッフを名乗り出る奴がいるとはな。

まあ、この2人なら見た目的に普通科だろうし、何も心配はないだろう。

「分かりました。では、2人には誘導係を……、」

「嫌だよ、そんなの。」

チャラい方……辰巳大輔という奴が言った。

「誘導係なんてやってたら、ファンに見つかるだろ。却下!」

イラッ

「だったら、どこなら良いんですか?今の話を聞くと、受け付けも無理そうですし。」

「あ、あのっ……、照明係とか、どうでしょうか……?」

今度は気弱い方……細谷京という奴が言った。

「あそこならほとんど人は来ませんし、操作もそんなに難しくないですよね?」

「まあ、確かに。」

証明係か……。

ま、いいか。

「分かりました。照明ですね。」

「おう!よっしゃ、やるぜ!京!!」

「あ、ありがとうございました……!」

2人はそう言って、帰って行った。

そして、その直ぐ後に、澄春くんがやって来た。

「失礼します。」

「待ってましたよ。」

「すみません。」

「いえ。それより、計画は上手くいきそうですか?」

「はい、大丈夫です。」

「今度こそ、日奈子をどん底に突き落とせる。君は優秀だ。期待しているよ。澄春くん。」

「はい、明人さん……。必ず日奈子さんを不幸にしてみせます。」

ふふふふふ。

日奈子、楽しみにしてるよ。

颯磨くんともすれ違い、澄春くんにも裏切られる。

ふふふ。

どんな気持ちかな……?

今度こそ、絶望するだろうね。