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「日奈子!?」

突然のキスをされ、一人で赤くなっていると、
後方から、私を呼ぶ声が聞こえてきた。

私は、慌てて振り返る。

「健吾……?」

「何やってんだよ。デートは?」

あー、そうだった。健吾には今日、デートだって
言ってたんだ……。

「……フラれちゃった。」

意外にも、簡単にその言葉がでてきた。

「えっ……?」

驚くよね、あんなに仲良かったんだもん。

「……何で?」

言っても大丈夫かな……?健吾、引かないかな
……?

「私、身長低いでしょ?だから、一緒に歩きたくなかったんだって……。」

言いながら、涙が溢れてきた。
でも、必死で堪えて、なんとか笑顔を作り出す。

「は!?何それ!最っっ低だろ!!」

健吾が叫んだ。

「日奈子は、そこが良いんだよ!」

えっ……?そこが……いい……?
どういうこと……?

「小さくて可愛い。守りたくなる。」

えっ……?

「今だって、お前が泣いてるの見て、凄く辛い。」

な、何言ってるの?健吾。

「外見で判断する男とか、最低。それだったら、それだったら……、俺にしろよ……。」

えっ……!

「そ、それって……?」

「だから!俺と付き合えって言ってんの!」

っ…………!?

「べ、別に、強制じゃないし、返事はいつでも良いから。」

「えっと……、でも、私……。」

フラれたばっかりで付き合うなんて、気が引けるし、健吾はただの幼馴染みで……。

「付き合ったら、あいつのこと、忘れられるかもしれないだろ?」

あ……、そういうことか。

「あいつを見返すことだって、きっとできる。」

きっと健吾は、私に同情してくれているだけなんだ。

「ありがとう。でも、明人くんを忘れる為に付き合っても、健吾にメリットはないよ。私、人に迷惑をこれ以上、かけたくないな……。」

「何言ってんだよ!」

えっ?

「何でそうなるんだよ……。」

え、だって……。

「俺は、小さい頃からずっと、お前が好きだ。」

っ…………!?

「えっ?健吾!?」

「いつも明るくて、笑顔で、でも本当は繊細で。傷ついても、誰にも涙を見せない。」

健吾……。

「今だって、本当は悲しいはずだろ?傷ついてるだろ?それなのに、号泣してない。それが辛い。俺なら絶対、傷つけないのに。」

そんな風に、思っていてくれたの……?
それなのに私はいつも、明人くんのことばかりで……。

「健吾……。」

外見じゃなくて、こんな風に私を見てくれる人がいるなんて……。

「いいよ、いくらでも泣け。傍にいるから。」

そう言うと、健吾は私を抱きしめた。

私は、健吾の腕の中で泣き続けて、泣いているうちに、何もかも分からなくなって、こう言った。

「健吾、付き合おう。」

なぜ、そう言ったのかは分からない。

分からないけど、きっと、心に空いた穴を埋めたかっただけなんだ。

今、すごくドキドキしてる。

ということは、きっとこれは恋なんだよ。

きっと……、

そうでしょ?