【短編】こたつとみかん



大好きな彼が、確かに、私の名前を呼んでくれた。


あだ名じゃない。


ちゃんとした名前で。


びっくりして、固まってしまう。



「ったく、本当に寝てんのかよ!」



っ?!

突然、バフッとコタツから冷たい風が吹いてきた。


小達が、立ち上がったらしい。


彼がこれからどう動こうとしているのか私には予測不可能で、目をつぶっているからなおさらだ。


「っ、本当に寝てやがる。調子乗ってんな」


やばい…。


真正面からやつの方が聞こえる。


寝たふりだってバレたら絶対ど突かれるよ。


けど、今の私の顔は見せられない。


開けたら終わりだ。


涙を溜めた真っ赤な目なんて死んでも無理。