「…………あつ……」 扇風機もクーラーもない教室の窓から潮の香りが入ってきて、俺の鼻腔をくすぐりながら流れていく。 「俺、インドア派のはずだけど、今はすごく海に行きたいよ……」 力なく放たれた俺の言葉は、決して独り言ではない。 その証拠に、目の前でクスクスと笑う彼女の姿が目に映った。 「渡利くんて、意外と面白いよね」 「意外と、は余計だよ」 「あはは、ごめんごめん」