「あの、ずっと言いたかったんですけど…」


「ん？な〜に？」


「僕、『秋』って書いて『みのる』って読むんですけど？」


「ははっ、知ってるよ〜」


「じゃあ何であきちゃんって呼ぶんですか？」


「んー、なんとなく」


「…またそれですか…」


「なんかさ、みのるちゃんって言うより、

あきちゃんって呼ぶ方がしっくりくるって言うか、

あきちゃんらしい感じがするんだよ〜」


「…なんですか、それ」


「あれ、いやだった？」


「…嫌ですね。

僕のこと『あき』って呼んでいいのは、

雪だけですから」


「せつ、ってさっき言ってた欄香 雪くん？

確か蘭香くんって読み、ゆき、じゃなかったっけ？」


「そうですけど、僕はゆきの事をせつと、

せつはみのるではなく、あきって言ってるんですよ」


「さすが、幼なじみって感じ！」


「まあ、お互い名前で苦労しましたから…。

今は、全然気にならないんですけど」


「ふーん。なるほどねぇ」


「あ、ここでいいです。

僕ん家、ここ曲がってすぐですから」


「そ？家まで送るけど？」


「いえ、ここで」


秋の心情を察してくれたのか、何も言わず頭を撫でた。


「りょーかい！じゃあまた明日ね」


「はい」