朝食を食べてから街を散策していると、不意に携帯が鳴り相沢さんが画面に目をやる。

「ごめん、会社からだ」
「あ、どうぞ」
ごめんね、そういって相沢さんは電話に出るため離れていった。

1人になって何気なく街並みを眺めていると、ふとあるお店に目がとまる。

わ、可愛い…

私の目を引いたのはジュエリーショップのウインドウディスプレイだった。中でも中央に飾られた華奢なネックレスは、繊細なチェーンと飾られた星形のダイヤがとても素敵で思わず乙女心をくすぐられる。

「おまたせ」
「あっ、おかえりなさい」

聞こえた声にパッと後ろを振り向くと、申し訳なさそうな相沢さんの顔がそこにあった。

「ごめん、茜ちゃん。今からどうしても会社に行かなくちゃいけなくなって…」
「そうなんですか…日曜日まで大変ですね、私のことなら気にしないでください」

残念だけど、仕事ならしょうがないよね…

落ち込んだ気持ちがばれないように必死に笑顔を作って相沢さんを見上げる。

「本当にごめん。…家まで送るね」



それからの車に乗ってから時間は本当に一瞬で、あっという間に窓の外には見慣れた景色が見えていた。

「また連絡する」
「はい、お仕事頑張ってくださいね」

さみしい気持ちを隠すように笑顔を作り、助手席の扉を開けようとしたとき…不意に手首を掴まれて、引き寄せられる。

「あーだめだ。離したくない」

抱きすくめられたかと思うと耳元にそんな子供みたいな囁きが落とされて、思わず胸がきゅんとする。

「ふふっ、私もです」

同じ気持ちでいてくれたことが嬉しくて、なんだか愛おしさが込み上げて…目の前の愛しい人に触れるだけのキスをした。