「まさか男の人だったなんて…」

朝イチの情報番組。
聞き慣れた女性アナウンサーの声の傍で画面いっぱいに表示された写真を見ながら、私はまさに開いた口が塞がらなかった。

にこやかな笑顔を浮かべて握手を交わすのは、色素の薄い髪が綺麗な長身美人…もとい雪さんの会社と業務提携をしたアメリカの敏腕男社長と雪さんである。

私が誕生日の日に見た女性(だと思っていた人)とは、まさしく彼で。雪さんが最近多忙を極めていた理由もこれだったらしい。

「おーい、茜?」
「私、何ひとりで勝手に突っ走って…」
「誤解が解けたならよかったよ」

正座する私の顔を横から覗き込んだ雪さんが、安心したように微笑む。

アメリカ出張を終えて仕事がひと段落した雪さんに「改めて誕生日のお祝いをさせて欲しい」と言われ、今日は久しぶりにゆっくりと1日を過ごすことになっていた。

しかしとんだ勘違いをしていた自分が恥ずかしいやら、雪さんがすごい人なのだということを改めて実感させられるやらで…もうなんだか真っ直ぐに彼の顔が見られない。

「そんなに熱心に見つめるなら、こっちにしてほしいなあ」
「え?」

そんなことを考えているとちょっぴり意地悪な低い声が聞こえて、雪さんが私の横に膝をついた。
顎を掬われて落とされたキスを受け止めるまま…優しくソファの上に組み敷かれていく。

「雪さん、まだお昼…」
「ふーん、そんなに余裕なんだ」

愛しむような触れるだけだったキスが、一気に深くなる。唇に、頬に、首筋に…角度を変えながら、何度も何度も。