オト「15歳の時の僕は、君が凄く魅力的に見えた。だって、顔は強ばってるくせに、強がってて、本当に愛しいと思った。」
恍惚とした表情で見つめた、オト。
オト「アイツに…兄に君を汚されるくらいなら、いっそ僕のものにって思った。アイツを殺して、僕のものにって。でも僕には力が無かった。アイツを殺せるだけの実力が。」
『…っ…あの人も、殺し屋か何かだったの?』
オト「うん。僕の組織のトップだったからね。」
トップ…。
オト「だから、僕は君の両親に連絡したんだ。君たちのお子さんは今、ここにいるよって。」
『!』
オト「そしてその日、羽咲の両親は死に、兄は警察に逮捕された。」
『っ…つまり、私の家族を殺したのはアンタってこと…?』
オト「何言ってるの。殺したのは兄だよ。僕はただ、“連絡しただけ”。」
『っ…。』
オト「兄が逮捕されて、1ヶ月。アイツは脱獄した。いとも簡単にね。」
…そりゃ、そうだ。トップだもん。
オト「僕は兄の元で、暗殺術を学んだ。いつも、兄のそばいた。兄の言うことは絶対に聞いた。…そして、また君を攫ったって聞いた。」
『…オトは、あの日どこにいたの。』
オト「いつも扉の前にいたよ。そして、絶好のチャンス。君の彼氏が兄を殴り込みに来たんだ。碧、くんはとても強かったみたいだね。とても助かった。」
『え…どういうこと。』
オト「あの後、射殺音がしたでしょ?僕は兄を殺したんだ。」
『…射殺音…?』
オト「君は目の前で彼が死んだことで、動揺してたからね。ふふ、裏切られたって気付いた時の兄の顔が滑稽で、初めて兄のことを心から愛したよね。」
『…やっぱ、狂ってるね、オトさんは。』
オト「うん、自覚してるよ。そして僕は心の中で誓ったんだ。一年後、君を迎えに行くってね。」
『一年後…そう言えば、もう一年か。』
オト「何、自覚なかったの?」
『…毎日が楽しすぎて、すっかり。』
オト「ふふ、素直だね。」
『碧のことは片時も忘れたこと無かったよ。両親のことも。でも、悲しいとか、憎いとか、そういう気持ちはすっかり忘れてた。』


