痛みは、来ない。



それどころか、暖かい。



目の前は、真っ暗だ。



目を開けると、



『…あ…おい……。』



辺りは、真っ赤に染っていた。



「…やっぱり、死んでくれたよねぇ。…ふふ、あはは、あはははは…これで、僕と君は…」



『……あ、おい…。』



周りが無音になる。



時が止まったように、思える。



けれど、少し遠い場所から



バンッバンッバンッ



拳銃の音がした。



「ッグハッ……ッアイツ…裏切りやがって…」



何故か、彼も大量の血を流していた。



そして、そのままどこかへ行くと



また



バンッバンッ



拳銃の音と、人の声が、遠くでしたように思えた。



でも、私は



『あ…おい…ねぇ…碧…?』



「…っ…あ、危ねー…危うく、羽咲が当たるところだったわー…。」



『っ喋んな、バカ。傷口が…』



「…羽咲、俺は多分もう無理だ。」



『変な事言うな、アホ…。』



「…なあ、羽咲。俺、超幸せ者だよね。…世界で一番愛してる彼女に見守られてさ、死ねるって。」



『っやめろって言ってんじゃん…碧…。』



「…警察は、もうじき来る。念の為に、救急車も呼んだ。…アイツらも、呼んだ…ッゲホッ…。」



碧は血を吐いた。



『…っ碧…やだ、死なないで…私、もう…大事な人を失いたくないよ…。』



「…ゴメンね、羽咲。…きっと、ずっと引きずるんだろうな、俺のこと。」



『っ…っ…。』



「…ねえ、一つ約束してくれない?」



『っ…何…。』



「…この事は、誰にも言っちゃいけない。特に《ALICE》の奴らには、絶対。」



『な、んで…?』



「きっと、自分のせいだって、悲しむから。…誰のせいでもないないけど。」



『…っ…。』



「…お前だけが、このことを覚えていればいい。そうしたら、俺と羽咲との繋がりは無くならない。…未来の羽咲に謝っとく。ゴメン。」




『…っ碧…。』



「…約束、してくれる?」



『っわ…かった…誰、にも…言わない…っ!』



「…ゴメンね、羽咲。…縛り付けて申し訳ないけど、俺のことは忘れないでほしいんだ。」



『忘れないよ!絶対に!!碧といた時間は楽しかったし、これからだって…!』



「……っあー……羽、は咲を…一人に…したくない、なー…一、緒に…生きた、かった…なー…。」



『っ…碧…?碧、碧…?ねえ、碧…!?』



いくら呼びかけても、返事はしなかった。



彼は、本当に死んでしまった。



彼が息絶えた後に、《ALICE》の仲間がやってきた。