秋さんに引き取られて、秋さんと私の二人暮らしも始まって
それがようやく一年、経とうとしていた。
毎日のように碧が遊びに来てくれて、
《ALICE》のみんなと戯れて、
組織の仕事も順調で、
何もかも上手くいっていた。
もう傷は癒えた。
そう思ってたのに…
ザァァァァ…ゴロゴロ…。
『…大丈夫、大丈夫。怖くない、怖くない…。…う…。』
あの事件から、丁度1年。
両親の命日の日に限って、雨だった。
大丈夫、何も心配ない。
大丈夫、あの事件のことはもう忘れるんだ。
必死に吐き気と心の中のドロドロした何かを抑え込むように、クローゼットの中に入ってた。
暗いところで、耐えてた。
安心出来ると思った。
でもどんどん怖くなって、逆に身動き取れなくなった。
『…ッ…ッ…。』
コンコンッ
碧「ウサギー?部屋いるんでしょー?あーけーてー!」
コンコンコンッ
碧「ウサギー?」
コンコンコンッ
碧「…勝手に開けちゃうよ。」
コンコン…
ガチャ
碧「ウサギー…?」
『…ッ…あ…おい……。』
碧「…ああ、そっか…今日だったね…。君のことだから、多分クローゼットの中なんだろうけど…。」
『…怖い…怖いよ…誰か…誰か…。』
碧「…やっぱりここか…。」
コンコンッ
ガタガタッ
『ッキャァァァァァァ!!!!!!』
碧「ッ羽咲!!?」
『やだ…!やだ…!怖い…!嫌…!!!助けて!助けて!!誰か!!助けて!!!!』
急いで碧が扉を開く。
羽咲はカタカタ震えてこっちを見向きもしない。
碧「…羽咲…。」
出来るだけ優しく、優しく触れた。
ビクッ
碧「ほら、大丈夫だよ…俺は何もしないし、羽咲の嫌がるようなことなんてしないよ。」
『……カタカタ』
碧「…そんな暗いところにいると、もっと怖くなるよ。…だからほら、おいで。」
ドカンッ
『…!』
一筋の雷が、鳴ったと同時に羽咲は飛び出て真っ先に碧に向かった。
碧「よし、いい子だ。」
『…あ、おい……。』
碧「…なーに、羽咲。」
『…ごめ、ん…ね…怖くて、弱くて、ゴメンね…。』
碧「…羽咲、よく聞いて。」
『ん…。』
碧「羽咲は、《ALICE》のリーダーで、みんなに頼りにされてて、みんなにカッコイイって思われてて、無敵だって思われてる。凄く期待されてる。理想的だって思われてる。」
『…うん。』
碧「だから羽咲は、その期待に応えようとしてる。…みんなの理想になるために。」
『…うん。』
碧「羽咲はとってもよく頑張ってる。みんなのために期待に応えて、理想になって、敵から守って…。…大変じゃないわけが無いんだ。」
『……。』
碧「…無理やり一人で背負わなくていい。俺たちはなんの為の仲間?…俺たちは君を支えていく仲間になりたいのに。」
『…だって、私が頑張らないと…私が守らないと…お父さんとお母さんみたいになって欲しくないから…。』


