珍しく三人で、暑い中、ショッピングモールに行った。



悠真「今日は雪羽と羽咲の服を買いに行くぞー!」


『おー!!』



雪羽「私、そんなにいらない…。」



『えー!お母さん!!オシャレしないとお父さんが浮気しちゃうかもしれないじゃん??』



悠真「俺そんなことしないけど!!?」



雪羽「…確かに…心配だわ。」



悠真「何でー!!?」



『ほら!お父さん、お母さん!行こーう!!!』



雪羽「…羽咲ー、速いよー…!お母さん追いつけないー…!」



悠真「…雪羽、腕、組みます?」



雪羽「…ふふ、組みます。」



ジーッ



『…デート。』



雪羽「ふふ、三人でデートよ。」



『「デート!!!」』



雪羽「何が欲しいんだっけ。」



『えーとね!ワンピース!』



悠真「それは…まさか週刊少年ジ」



『違う。確かにカッコいいけど、違う。普通に、白いワンピースが欲しいの。』



悠真「ごめん、ふざけ過ぎた。」



雪羽「羽咲ならもっと派手なの似合うと思うけど。」



『何か目がチカチカするんだよねー…。』



雪羽「分からなくもないけどね、それ。あ、じゃあこんなのは…」



悠真「雪羽!このスカート!!いいと思う!!!」



『お父さん!たまにはこんなワイシャツ着たら!!?』



悠真「俺、吐血テディベアは着ないよ!!?」



たわいもない会話。



普段と同じ、三人の親子。



ちょっと喧嘩強いだけの、普通の親子。



ずーっと続くと思ってた。



こんな平和な時間が、



あの日で全部壊れてしまったんだ。






















気付いたら、私はそこにいた。







『…ッお父さん…!?…ッお母さん…!?』


青白くて、真っ赤な体が重なっている。


血塗れた床。椅子に縛られた私。



どうしてこうなったか、自分でも分からない。



そして、思い出す。



ああ、あの時攫われたんだって。



偶然その日は、大勢の人がいて、



偶然その時はぐれて、



人混みに流されていった。



どうしようって思ったその時、



薬を嗅がされた。



意識が落ちる寸前に、



お父さんとお母さんの必死な顔と声が



こびりついた。