『…でもね、アイツらも悪くないんだ。何も知らないから…全部悪いのは私なの。』
隼「…何も知らない…?」
『…ウン。これはね、私とアイツとの約束なの。』
隼「…アイツ…?」
『…私の好きな人。』
隼「…っ!」
『だった人、だよ。もうこの世界にはいないの。』
勝手に私を守って、勝手に私と約束して、勝手に死んだ、バカな奴。
『私はアイツとの最後の約束して、死んでった。仲間のために…私のために。』
隼「その約束は……俺は聞かない方がいいか。」
『いーよ。隼なら、守ってくれそうだし。でもアイツには怒られちゃうかも。』
隼「……。」
『一つは、彼らに本当の真実を伝えないこと。伝えたらアイツらも死んじゃうかもしれないからって。』
隼「死ぬ…?」
『…もう一つは…っ…。』
隼「…どうした?大丈夫…か?」
『…大丈夫。』
少し震える。…あの時の光景がフラッシュバックしそうになる。
血塗れの、彼。
『…もう一つは…俺を忘れて…って。今思えば、未来の私のために言ったことだって分かるけど…あの時は凄く心が痛かった。』
好きだった彼を忘れる。
それだけはしたくなかった。思い出にもしたくなかった。
『…今でも思い出すと心が悲鳴をあげてる。辛くて悲しくて、でも…。』
隼「…でも?」
『アイツを忘れて、楽にもなりたいって思った。…でもあの言葉はそんなんじゃないって…アイツのあの言葉はもしかしたら私がアイツを忘れないために、言ったんじゃないかって…。』
頭良くて、未来もよく見えて、
先回りして物事を考える。
明るくて、優しい人。
『…忘れてって…言われても忘れる訳ないんだ。だって…好きだったから。』
隼「……。」
『…他人の好意は人を縛る。どうせなら“愛してる”くらい言えば良かったのに。“好きだよ”って……そしたら区切りがついたかもしれない。忘れることは無いけど、思い出に出来たかもしれない。』
隼「…っ…。」
『…あんな辛い時に…あんなに血が出てて…でも笑顔で約束して…』
隼「…っ羽咲…。」
隼は羽咲をぎゅっと抱きしめた。
『…っ……。』


