わたしはしばらくの間ソファの横の床にぺたんと座り込み、動けずにいた。


「気にしない、気にしない…。」


そう自分に言い聞かせる。


「だって…初めては光じゃん…だから、気にしない。」


襲われかけた時の見知らの男との接吻はノーカウント。


そう。


わたしのちゃんとしたファーストキスを奪ったのは光。



初めて泣いた雨の日、光にそっと口づけされた。



あの時の感触、高揚感、全て体が覚えてる。



だから…あの最低男とのキスなんて、忘れちゃえばいいんだ!覚える価値もない!!


あれはただの事故!そう!同意の元じゃないから完全なる事故である!!!


って…そう簡単にいくはずもない。

だって数少ないわたしのキス。

わたしの人生で三番目のキスのミントの香りがまだ残っている。光のよりもずっと甘くてチャラいあのキス…唇から離れない…

体の震えが治らないよ。

わたしが求めているのは、もっと優しくて、そっと割れ物に触れるような彼のキスなのに…どうしてっ…っ


「最悪…マジで、最悪。」


ていうかそもそも、どうしてこうなったんだっけ?

ことの発端はわたしが岬に行き先を訪ねて…いや、岬がわたしの感情に気づいていたところから始まったんだ。

だからもっと追求すれば…わたしの光に対しての恋心がいけなかったっていうこと?


「はあー…。」