そのあと、西和田に、奏汰にお茶を持っていくように言われた。
他に誰も居なかったので、社長室で、つい、
「どんな人にもいいとこってありますよね」
と呟くと、
「開口一番なんだ?」
と奏汰が、パソコンから目を上げ、訊いてきた。
「西和田さんですよ。
スパイですが、良い方です」
と言うと、スパイですが良い方とかあるか、と渋い顔をされてしまう。
そして、一口茶を飲んだ奏汰はまた渋い顔をした。
「お前、つまみは上手いが、お茶淹れるのは下手だな」
熱いし、濃い、と顔をしかめる。
「うちの粗茶よりまずいぞ」
と言われ、ははは、と笑った。



