眠らせ森の恋

 つぐみは今、料理に夢中だからだ。

 また図書館に踊らされ、今度は海軍さんが作った料理とやらにはまっている。

 やはり、図書館にお袋の味の特集をしてくれとリクエストに行くべきか、と思っていると、西和田は鼻で笑い、

「まあ、ご夫婦の愛の証(あかし)もいいですけど。
 毛糸は引っ張るだけで、解けますよ」
と言い出した。

 何故お前は、夫婦で積み上げてきたものを解かせようとする……と思っている間に、
「失礼します」
と言って出て行ってしまった。

 入れ違いに入ってきたつぐみを西和田はチラと見て行く。

 つぐみが閉まった扉を振り返り、
「すさんでますね~、西和田さん」
と苦笑いしていた。

 つぐみもなにか言われたのだろうか、と思いながら、

「……見合いのせいかな。
 専務は親切で言ったんだろうにな」
と椅子に背を預け、溜息をついた。