ぼんやりしているつぐみは、なすがままだった。

 抱き上げても、そのまま眠そうにしている。

 可愛いな、と腕の中で、ぼんやりしているつぐみを眺めていた。

 夢の中で見たお姫様のようだ。

 ……いや、どれもロクな夢じゃなかったんだが、と思いながら、つぐみに向かい、文句を言う。

「だいたい、妻なのにいちいちお伺いを立てないといけないの、おかしくないか?」

 正式に結婚したものの、照れ屋だからか、つぐみは夫婦になっても、拒絶しがちだった。

 まあ、そこが今はまだ、可愛くもあり、と微笑んでつぐみを見下ろしたあと、奏汰は、階段を見、

 ……しかし、こんなことが続くのなら、いつかエスカレーターにするべきだろうか、
とちょっと思う。