それを炎ごとアイリッシュコーヒー専用だという持ち手のついた耐熱グラスにそそぐ。

 グラスの中で炎が踊るのを見たあとで、角砂糖を入れ、熱い珈琲をそそぎ、そっと生クリームを流し込んだ。

「ほら」
と差し出され、

「いい香り。
 大人の珈琲って感じですね」
とまずその芳香を嗅ぐ。

 熱いそれを口にすると、ウイスキーをフランベしたせいか、まろやかな味になっていた。

「美味しいですっ」
と嬉しそうに呑んでいると奏汰が微妙な顔をする。

 なにかいけませんでしたか? と呑みながら上目遣いに窺うと、
「いや……。
 そんなに酒好きなのに、可哀想にな、と思って」
とよくわからないことを言い、頭を撫でてきた。