眠らせ森の恋

 そうか、と頷いた奏汰は自分よりも随分年上の部長に頭を下げ、
「松本部長。
 これが婚約者なのに、なにもさせない私の秋名つぐみです」
と紹介し始める。

「社長、私の、の入る位置が違います」

 私の婚約者だろうが。

 今すぐ眠りのツボを押したい、と余計なことばかり口走る奏汰に思う。

「松本部長、本日、同席されますか?」
とつぐみが助手席の松本に訊くと、未だ事態に付いていけていない松本は、ただ、こくこくと頷いてくる。

「では、社長には、あまり発言させないようにしてください。
 よろしくお願いします」
と言って、頭を下げた。