眠らせ森の恋

 



「西和田さんですか? 秋名です。

 すみません。
 社長、高熱で」

 つぐみが秘書室に電話すると、いつも早くに来ている西和田は、すぐに捕まった。

『社長、休まれるのか? 

 まずいな。
 今日の会議は社長が居ないと』

「なので、二時間寝て行かれるそうです。
 その間だけでも、薬で熱を下げるしかないかな、とは思ってるんですが」

『もうすぐ始業時刻だが、お前は休むのか?』

 そう問われ、つぐみは考える。

 困ったな。

 一緒に二時間遅れるというのは変だし、かと言って、休んでしまえば、社内の奏汰さんの様子が見られない。

 悩んでいると、
『わかった。
 お前のことは、来てからお使いに出したとでも、適当に誤摩化しておいてやる』
と言ってくれる。

「ありがとうございます。

 あの、田宮さんはすべてご存知ですので、田宮さんと今川さんには、ご協力願えると思います」
と言うと、

『あの辺が知ってるのなら、もういいんじゃないのか?』
と言ってくる。