眠らせ森の恋





 熱のせいか、また、おかしな夢を見た。

 遠くに塔が見える森の中を歩いていてると、いきなり、ぽっかりと開けた場所があり、花が咲き乱れていた。

 そこで、ドレスを着たつぐみが気持良さそうに風に吹かれている。

 俺の冠を返せ、と思っていた。

 お前のせいで、俺は自分が王子なんかじゃないと気づいてしまった。

 でも、俺は、お前の王子で居たいんだ。

 賛美歌を歌いながら、こちらを振り向き、つぐみが言う。

「私の運命の人を返してください」
と。

 そんなもの居ないぞ、と思う。

 そんな男は居ない。

 もし、居たとしても、俺がそいつを喰ってしまうから。