眠らせ森の恋

 



「失礼します」
と社長室に入ったつぐみが、

「粗茶ですが」
とお茶を出すと、

「……だから、それ、此処の茶だろ」
と言ったあとで、奏汰が、

「なんだ、これは」
と言ってくる。

 お茶の横に添えられているものを凝視していた。

「いえ、わざわざ持って行く、と言ったので、なにかすごいお茶かお茶菓子でもないかな、と思って探したんですが、今日は、たまたまございませんで」

 これをお持ちしました、と駄菓子屋で買ったイカの駄菓子を手で示す。

「イカ臭くなるだろうが。
 午後商談があるのに」
と奏汰は渋い顔で言う。

「っていうか、お前、いつ、駄菓子屋行った」

「この間の休みに一緒に出かけたとき、書店のあとちょっと寄ったショッピングモールの二階にありましたよ」

「俺も誘えよ」

「マッサージチェアに長くかかってるからですよ」