効かないのか、このツボ。
つぐみが、朝、仕事をしつつ、耳のツボを押していると、西和田が、
「なにしてるんだ……」
と異様なものでも見るように見ながら言ってくる。
「いえ、此処を押すと、精神が安定し、安眠できるそうです」
と言って、
「仕事中に安眠するな」
と言われた。
まあ、ごもっともだな、と押すのをやめる。
そのとき、引き出しの中で、マナーモードにしているスマホが震え始めた。
西和田と目が合い、えへ、と笑って誤摩化そうとしたが、西和田は溜息をつき、
「急ぎの用かもしれんだろ。
出てみろ」
と明らかな私用電話なのに許可してくれた。
はーい、と急いでスマホを手に、廊下に出る。
しばらくして、つぐみはスマホを手に、青褪めて戻ってきた。
「西和田さん」
と呼びかけると、うん? と西和田がキーを打つ手を止め、顔を上げる。



