キッチンに立つ奏汰の横で、つぐみは海野に習ったという海老料理を作っている。
お、生意気に、小出刃で海老の背を開けている、と思ったあとで、
……なんかこういうのもいいな、と奏汰は笑った。
夫婦並んで酒と料理を作るとか。
「今日は、お前がツボを押してくれたから、俺も健康にいい酒を作ってやろう」
モヒートだ、と奏汰は言った。
庭にあるミントを摘んでくると、ライムを切って、ラムを用意し、モヒートを作る準備をする。
モヒートを知らなかったらしいつぐみが、
「モヒート……」
と呟き、斜め上を見たので、
「……それは、モスキートだ」
とつぐみの頭の中を呼んで言う。
「すっきり爽やかな見た目と口当たりで、夏にいい酒だがな」
グラスにたっぷりの摘みたてミントとライムと氷。
夏にびったりの涼やかなカクテルだ。



