眠らせ森の恋

 



 食事のあと風呂に入り、ソファで並んでテレビを見ていると、つぐみがソワソワした風に、
「もう九時半ですよ。
 まだ寝ないんですか?」
と言ってきた。

 子どもか。

「不眠症ですか?」

 阿呆なのか?

「眠れないのは、交感神経に対して、副交感神経が優位に立っていないからです。
 自律神経のバランスが取れてないんです」
と今得たばかりらしい怪しい知識を披露し始める。

 だから、九時半だ……と思っていると、いきなり、つぐみに手首をつかまれた。

 そのまま向き合って座り、つぐみは脈を測っている。

「ほら、脈も乱れています」

 ……お前が手を握っているからだ、莫迦者、と思ったが言わなかった。

 つぐみに手を取られたくらいで動揺していると知られたくなかったからだ。