放課後。
悪いんだけど、一年生の校歌の紙を忘れてきたから音楽室にとってきてくれる?なんて、何で私なんだろうか。
ため息をつきながら、三階の音楽室へ繋がる階段を上る。
音楽室の前立つと防音効果があるせいか、小さくだけどピアノの音がした。
それは上手いかなんてわかんないけど、下手ではないし、ピアノ歴数年とかの実力であることは私でもわかった。
誰か弾いてるんだな。
すごく上手。
開けていいものか迷ったけど、中を見たかったし、先生からの頼まれものなら変な顔はされないだろうと思った。
ギィ、と音がなって、重いドアを開けた。
それと同時に、ピアノの音も止む。
「あれ、長野さんじゃん?」
そこにいたのは本郷くんと一城さんだった。
気づいてくれたのは本郷くん。
「あ?本当だ!どうした?」
「あの、先生に頼まれものされて…」
「あはは~、ドンマイ!」
「はは…」
本郷くんと一城さんはイスを二つ並べて、ピアノに向かう。
本郷くんは、もうピアノに置いてある楽譜を見て何かぶつぶつ呟いていた。
「ごめんなさい、邪魔しちゃって」
「気にしないで~。行き詰まって、五月のテンションも下がってた頃合いだから」
一城さんはいつも通り、おっとりした声で答えてくれた。
あんなにすごいピアノを弾いてたとは思えない。
失礼だけど。
「良かったら聴いていく?」
今まで黙っていた本郷くんが口を開いた。
「え、いいの?」
「珍しいねぇ、五月。五月が言うなら、私もオッケーだよ」
外で聴いていたピアノをここで聴けるとは、というよりも、皆が聴きたいと言ってたピアノを、世界で通じるピアノを聴けるなんて。
