今日も目まぐるしい時間は過ぎ、後片付けを始める。

本当なら、明日は定休日。

でも、明日は、シェフの大事な友人の誕生日とかで、どうしてもその人のお祝いをしたいとのことで、シェフと私の二人は出勤する事になっていた。

バースデーケーキの下準備をしていると、シェフが横に来て、それを見守っている。

「…シェフ、どうかされましたか?」
「…いや、ちょっとお願いがあるんだが」

そう言うと、ポケットから、一枚の写真を取り出すと、それを私に見せた。

「…チョコレートケーキ、ですね」
「…あぁ、このケーキと全く同じものを作ってもらいたいんだ」

シェフの要望に、困惑する。

無理もない。

写真だけでは、どんなケーキなのか、全くわからない。

しかも、古い写真なのか、若干色が剥げている。

「…無理は承知だ。だが、少しでもそれに近づけるものを頼む」

そう言うと、私の肩をポンポンとたたき、その場を離れていった。

私は写真を見つめ、しばらく固まっていた。

全く情報がない。あるのはこの写真だけ。














「…あ」