「松下柚葉さん?」
初老の警察官は、刑事課に訪れた柚葉を見付けると
すぐに声をかけた。

二十歳の女の子にとって
警察署は
落し物くらいしか縁がない。

『おたずねしたいことがあります』

二日前にそう携帯にかかってきた電話で、柚葉は
警察署に呼び出された。

手招きする警官の
方向に行く。

『タイホされちゃうの?』別にやましい事はない。
しかし、警察署に名指しで呼ばれた不安が
柚葉をそう思わせた。

「松下さん、忙しいのに
ご苦労様、早速ですが確認して頂きたいものがあります」

丁寧な口調に柚葉は
安心する、
そして
警官は柚葉に一葉の写真を見せた。
「誰だか心当たりは
ありますか?」

写真に写る男の顔に
表情がないのに
柚葉はハッとした。
写真の顔に
精気がまったくないのだ

もう一度見る
「おじさん・・・」

「知り合いなんですね?」「はい・・・」