何度も角度を変えてするキスは、涙の味。


自然と溢れる涙が、私と彼の唇をすり抜けていく。




「…い、」


「…え?」


「奏多くんなんか、大っ嫌い!」




キスをした後、彼の目を見てハッキリそう言ってしまった。


本当は嫌いじゃない。


大っ嫌いなんて、程遠い言葉。


本当は大好きで、毎日会いたくて話したくて、バイクの後ろに乗せてほしい。


色んなところに行って、色んな思い出作って、色んな彼を知りたい。


だけど、口から出る言葉は全部正反対のもの。


目の前が涙でいっぱいになった私は、それ以外何も言わずにその場を去った。


どうせなら「大好きだったよ」って言えばよかったかな…。


なんて後悔を少し抱きながら。