準備は万端【短編】

池のまわりをぐるりと一周して、あたしはようやくごはんにありつけた。

バスケットの中には、見事に洒落たピクニックメニューが詰まっていた。

ローストビーフ、オリーブのピンチョス、ほうれん草のキッシュ、アーティチョークとオイルサーディンのサンドイッチ、丸ごとトマトとセロリのサラダ。

コップがなかったので、直接、瓶に口をつけてワインをまわし飲みした。

「いつでもお弁当作ってあげるよ。どうにかなりそうだったらピクニックに連れて行ってもやる」

あたしがぱくぱくサンドイッチにかじりついているのを嬉しそうに眺めて、圭が言った。

「これ、圭が作ったの?」

あたしは驚いて顔をあげた。

「うん。店の厨房借りて。そんでついでに再採用してもらってきた」

「すごい! 天才的に美味しい! 信じらんない!」

なんだ、ちゃんとレベルアップしてるんじゃん。

ぽつんと思って、あたしは手についたマスタードをぺろりとなめた。

「あ! ひこうきぐも! おねがいごと三回言え! 早く、早く!」

圭の叫び声につられて空を見あげると、青い空に一筋のひこうきぐも。

そんな、いきなり言われても、どうしよう、えーっとえーっとえーーーーっと、ともたついてるうちに、ひこうきぐもは風に飛ばされちぎれて消えた。




Fin