ドクドクと心臓が痛い。

足元に大きな穴が開いて、一気に落ちていく気分だ。

それでも、一気に頭の中をフル回転させる。

だって、これは、そうゆう事でしょう?


思わず握った彼の指先に感じるもの。

どこか冷たい、ソレ――。


「・・・・・・ゆび・・・・・・わ」


零れた声は、彼に聞こえていたか分からない。

それでも、伏せていた瞼をゆっくりと持ち上げて私を見た事から、この声は聞こえていたんだと思う。


互いに見つめ合う。

何も言わずに、ただただ。

瞳を揺らす私と、ただ真っ直ぐに私を見つめる一ノ瀬さんのビー玉の様な瞳。



ねぇ。

どうして?

どうして、今更――?


「一ノ瀬さん・・・・・・結婚、してるの?」



こんなの。

酷いよ。