その手が離せなくて


「いっぱい失敗して、いっぱい泣いて、いっぱい後悔すればいいよ」

「散々ですね」

「ふふっ。それぐらいが丁度いいのよ」


それぐらいが、丁度いい。

挫折を知らなかったら、大人になって負けた時、立ち上がり方が分からないから。

まだ真っ白な時に、沢山負ければ強くなれる。

前に進む方法を身につけられる。


「それに俊君は、そんな事で挫けないでしょ?」


チラリと隣を向けば、当たり前だと言わんばかりの顔でこちらに視線を向ける俊君がいた。

どこか輝いているその姿を見て、羨ましくも思う。

まだ未来にいろんな可能性がある。

沢山の選択肢が広がっていて、これから沢山の人達と出会う。

恋も、できる――。


「いいね。俊君は」

「え?」

「ううん。何でもない」


恋も、できる――。

愛して、愛されて。

そういう事が、できる。