「眩し・・・・・・」


ずっとカーテンを閉め切った部屋にいたからだろうか。

玄関の扉を開けた瞬間、朝日が目の前に飛び込んできて眉を寄せる。

そのあまりの眩しさに、目眩がした。


久しぶりにモノを食べて。

久しぶりに化粧をして。

久しぶりに仕事に向かう。


一見、今までの生活と変わらない様に見えるのに、何もかもが違った。

世界が色を失っている。

キラキラ輝くはずのものが、寂しそうに見える。

見るもの、聞くもの、感じるものが、どこか遠くに感じる。

頭の中で鳴り響いているのは、変わらず同じ言葉。


〝私の旦那に、よくも手出してくれたわね″


思わず立ち止まって、目を閉じて空を見上げる。

油断すると流れてしまいそうな涙を押し込んで、息を吐く。


これから起こる事を、他人事の様に想像しながら。