どうしよう。

そのうち、また吐き気をもよおす可能性は、大いにある。

なのに、隣に居座られたら。



「あの、ここ寒いので、部屋に戻られてください。一人でも大丈夫なので」

「いいよ。部屋は人一杯で居すぎても、片付けの邪魔になるだろうし。煩ぇし。」



不意に先輩の方を見たとき、目があった。



「俺が居ると、気遣う?」



真顔でそんなことを言うものだから、さらに顔が火照る。

酔いで、これ以上は熱くならないはずだったのに。



「いえ、大丈夫です」

「来栖はさ、よく人に気を遣うよな」

「そうですか?」

「…自覚無しか」



先輩が頭を掻く。



「じゃあ、誰かと居るのは、嫌いじゃない?」

「はい。誰かと居るのは、楽しいので」

「そうか。なら、良いんだけど」



そして、二人して黙る。

沈黙になれば、だいたいは居心地が悪くなるものだと思っていたのに、何故かしら、心地好かった。

このひんやりとした空間が、今は私を落ち着かせてくれる。