お開きの時間になっても、体は落ち着きそうもなく、むしろ頭がガンガンしてきた。

(でも、片付けはしなきゃ)

重力に逆らいたがらない己の身体を、無理矢理に立ち上げた。

大広間は人口密度と、暖房のせいで少しも居たくない。

ここから出て、涼みながらできる仕事を探した。

私は広間の隅に置いてあった、クーラーボックスに目を止めて、あることを思い出す。

大量の刺身の盛り合わせを入れてきた、クーラーボックスの中は、血塗れになっているはずだ。

そっと蓋を開ければ、案の定だ。

まず、これを男女共用のトイレの流しで洗う。

水で濯ぎ終えて、廊下の隅で中をペーパータオルで拭き取る。

ボックスの中を覗き込むように、下を向いて作業をしていると、頭痛が増してきて、思わずボックスに寄りかかった。



「…っ、情けな」



昨日まで、忙しなく営業職として、走り回っていたので、その疲れのせいで、酔いが回るのが速かったのだろうか。

あまりの頭痛に、泣けてくる。

というよりは、自宅なら何度かあるけど、人がたくさんいる場では、今までずっと気を付けてやってきたのに。

それをいつまでも貫けなかったことが、とても辛い。

誰にも見られたくない。