「あれ? もしかして、今の時点で俺に勝機アリ?」
店内の暖房が手伝って、顔がますます熱くなる。
こんなにグイグイ来られたことは無いから、恥ずかしい。
なのに、嬉しいから、変だ。
私自身を落ち着かせるために、ゆっくりと息を吸い込む。
そして、調子に乗り始めた先輩の興奮を抑えるように、そっと呟いた。
「いいえ……はじめから、私の完敗です」
先輩は分かりやすく、嬉しそうな顔する。
それに、私は照れ臭くて、堪らない気持ちになった。
食事も終え、店の外へ出る。
12月ともなれば、凍えるような寒さだ。
「宮地さん、すみません。結局、奢ってもらっちゃって。ご馳走様でした」
「気にすんな。黙って奢られとけばいいから。特に今日は、お礼ってことで」
「お礼?」
私が首を傾げると、先輩は何故か満足そうに笑った。
「彼女になってくれた、お礼。気長に頑張った甲斐があった」
「え、そんな前から……」
「そんなところに、食い付かなくていい……」
小さな私の驚きに、先輩が思いっきり照れている。
そんな姿に愛らしく感じていると、先輩は私をじっと見つめた。
そして、控えめな態度で私に尋ねた。
「触ってもいい?」
自分から聞いてきたくせに、私が返事をする間もなく、手が繋がれた。
その手は大きくて、温くて、頼り甲斐があって。
今まで男性に媚びることに恥じて、自信の無かった私も、この人なら大丈夫そう。
全く嫌じゃない。
そうして、そのまま私たち二人の積もる話は途切れることなく、駅までの道を歩いた。
酔ったら、
おわり



